「国土の多くはポルダーと呼ばれる干拓地」と義務教育で習った、風車とチューリップで有名な国の小さな村に派遣された僕の、留学前に調べた薄っぺらな情報から膨らませたオランダのイメージは、到着後1日で一変してしまった。
家から海までは車で3時間近く、国境にある「ドイツへようこそ」の看板までは自転車で10分弱。風車もチューリップもなく、森、畑、牛、羊、菜の花にあふれたこの村で農家を営む家族が、僕の1年間を支えてくれたvan den Goorファミリーだった。
オランダ人は基本的にオランダ語以外に英語、ドイツ語を話せるのは当たり前で、5カ国語を操るホストマザーは僕に「英語禁止、オランダ語のみで会話」というルールを課した。初めの数カ月間は何をするのにも苦労して、思ったことがうまく伝えられないことから、クラスメートとのランチの時間さえ辛く感じることもあった。けれど日々の勉強に加えて、社交的なオランダ人たちがどんどん話かけてきてくれたこともあり、語学力は少しずつ上達していったと思う。
あとは彼らの高すぎる(!?)テンションにさえ慣れてしまえば、うまく話すことは出来なくとも、コミュニケーションをとることはそんなに難しくはなかった。徐々にクラスメートや近所の人、ホストファミリーの親戚など知り合いの輪も広がり、とにかく陽気な彼らとスポーツをしたり、農作業を手伝ったり、カーニバルに参加したり、たくさんの楽しい時間を過ごすことができた。でもそれは、全てはホストファミリーの協力なくしてはありえないことだった。
知り合いが一人もいない遠い国で過ごした一年間。いちばん想像以上だったことは、こんなに素敵であたたかい家族と出会えたことだった。
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