2009/2/10 - AFS友の会新年会レポート
「AFSから貰った宿題―2020年までの核兵器廃絶運動と都市の役割」
広島市長・秋葉忠利氏(YP6)
1999年11月,エイ・エフ・エス日本協会創立45周年を機に誕生した「AFS友の会」では、設立10周年を記念する「AFS友の会新年会」を1月24日、如水会館で開催いたしました。1期生から今年留学する56期生に至るリターニー、ホストファミリー、ボランティアなどAFSに関わる様々な分野の方が約200名も参加され、10周年記念に相応しい盛大なパーティとなりました。ゲストスピーカーにお迎えした6期生の広島市長・秋葉忠利さんからはAFS留学時代に抱いたひとつの思いがその後大切に育まれ、いよいよ夢の実現が間近となっている大変興味深い、感動的なお話をしていただきましたので、ここにご紹介いたします。

秋葉・広島市長
秋葉さんのお話にはキーワードが二つありました。その一つは「宿題」。1959年、秋葉さんのAFS留学時代に時は遡ります。社会科のクラスでショックを受けた出来事、それは「真珠湾攻撃と原爆投下」に対する日本人とアメリカ人との認識の大きな違いでした。そして当時、被害の実情を伝え、反論をするに充分な知識や語学力をもっていなかったことから、後に「これはAFSから貰った大きな宿題である」と考えるようになります。帰国後、好きな数学を専攻し、日米の大学で教鞭を執られたこともありましたが、1999年広島市長に就任なさってからは、「宿題」の提出に向けて精力的な活動を積み重ねていらっしゃいます。平和宣言での核兵器廃絶や反戦の訴え、世界中の大学で広島・長崎講座の開設を提案するなどの他に、自ら「宿題」の提出期限を2020年と決め、秋葉さんが議長を務める平和市長会議で「2020年ビジョン-2020年までに核兵器廃絶を実現する」を展開しています。
もう一つのキーワードは「パラダイムの転換」、すなわち「世界を考える枠組みの転換」です。ヒロシマが発信するメッセージがなぜかくも強く世界にアピールしているかは次の四つの側面が考えられますが、いずれも「パラダイムの転換」が示されています。
※報復から和解へ
被爆者の話の中で一番よく聞く言葉、「こんな思いは他の誰にもさせてはならない」はとても重要なメッセージです。「他の誰にも」には原爆を投下した国どころか、投下した人さえも含む「和解」のメッセージであると同時に、原爆の被害がそれほどまでに凄ましい苦しみであることを意味しています。「和解」とは「敵を愛すること」はできなくても、相手を「攻撃しないこと」を意味するだけでも、未来の平和へ向けての協力関係をつくることができるのです。被爆者は三つの大きな足跡を残してくれています。 一つは死を選んでも不思議でない状況の中で生きることを選び、人間であり続けてくれたこと、一つは被爆体験を語り続けてくれたこと。そのお陰で今日に至るまで世界は三度目の原爆投下を経験していません。そしてもう一つは報復から和解へという大きなパラダイムの転換を示してくれたことが挙げられます。
※国家中心から都市への考え方
秋葉市長は1982年広島・長崎両市長によって創立された「平和市長会議」の議長を務められています。この平和市長会議では2020年までに核兵器廃絶を目指す「2020ビジョン(核兵器廃絶のための緊急行動)」を2003年秋から展開しています。加盟都市は現在134ヶ国2,635都市(2月2日現在では2,708都市)。昨年だけでも600都市が新たに加盟しています。ここでも国と国との関係から都市と都市との関係へとパラダイムが動いています。今や都市が立ち上がるときになったのです。なぜなら、都市こそ市民の声を代表するものであり、市民の日常生活に責任を負う都市と市民との間に信頼関係があるからです。 姉妹都市はあっても姉妹国とは言わないことから、敵を想定して成る国家間の同盟よりも都市同士の結束の方がはるかに平和の実現に貢献することは確かです。 地球温暖化問題などでは既に見られるように都市の力が政府に圧力をかけ、国を動かすことが可能になっているのです。
※専門家から市民参加へ
これからの平和の実現に大事なのは専門家に任せるだけではなく、市民参加が非常に大事になっています。そして最後に“イデオロギーから人間中心へ”のパラダイムの転換が挙げられます。
現在、核不拡散条約に批准している国は190カ国(国連加盟国は192)、非核地帯条約署名国が113カ国、日本の外務省が毎年国連に提出している核兵器廃絶決議案には昨年173カ国が賛成(反対はアメリカ、北朝鮮、イスラエル、インドの4カ国、棄権6カ国)、また、アメリカの世論調査でも6割が核兵器廃絶に賛成している、といった世界の状況からも、2020年までの核兵器廃絶は非常に実現可能なところまで近づいていると言えましょう。すなわち、秋葉市長の「AFSから貰った宿題」はすでに半分以上出来上がっているとも言えます。そこで秋葉市長からのお願いがありました。皆さんの住んでいる都市、関係のある都市がまだ平和市長会議に加盟していないようでしたら、是非アプローチをしてください。 加盟申請については平和市長会議のホームページに説明と申請書がありますのでご覧になってください。
最後にマーティン・ルーサー・キング牧師の「I have a Dream」にならって、秋葉市長の「夢」を語ってくださいました。核兵器廃絶の実現する2020年、それはちょうどオリンピックの年。「夢」はこの出来事を世界中で祝うため、ヒロシマ・ナガサキでオリンピックを開催すること!! 会場はその大きな、素晴らしい「夢」に一瞬驚いたものの、すぐに鳴り止まぬ拍手が続きました。その拍手にはAFSの仲間である秋葉さんを誇りに思う気持ち、秋葉さんへの感謝と、心からの声援がこもっているように感じられました。

講演に続くパーティで乾杯の音頭をとる6期生の皆さま
写真撮影:鳥山妙子さん(YP7)
| 印刷用はこちら |
