2月1日~5日にかけてのトレーナー養成ICL研修(Intercultural Link Learning)では、タイ、香港、フィリピン、インド、日本からの12人が参加した。
年齢は19歳から退職組までと幅広く、男女は5人対7人、AFSのスタッフもいればボランティアもいた。トレーナーは、アメリカ、ブラジルから各1人、インドから2人の計4人だった。
最初の日の期待半分、不安半分の気持ちが、最後の5日にはとってもさわやかで懐かしさいっぱいの気持ちになるぐらい5日間のつきあいは密だった。

news20170220-icl01
5日間のカリキュラム

まず最初の日の夜、壁には5日間のカリキュラムが貼られていた。このように説明を手書きで色紙に書くやり方は最後まで続き、パソコンやパワーポイントはほんの1-2度わずかな時間に登場しただけだった。5日間のセッション全体がいつも手作りで、その時々の発言や意見によって流れが作られていく、とてもプリミティブで即興的なやり方だった。
たとえば、最初の日にはこの5日間のルール”Rules of Engagement”を自分たちで決めた。いつの間にか、参加者が自分はこうしたいという気持ちを紙に書くことになり、それが自分たちの目標になった。
このように、いろんなことが「上からこうしましょう」と教えられるのではなくて、「自分たちはこうしたい」というボトムアップで決められていた。それも互いのフィードバックや発言に触発されて自分の考えを作っていくやり方で、相手の考えを聞きながら自分をふり返る作業を同時にしていた。

この研修では、普段は絶対にしないようなことを思い切ってさせられることになった。踊る、歌う、演じる、変な格好をする、他人の身体に触れる、自分の殻を破る、自分を表現するなどだ。恥ずかしいとか、身体が動かないと言っておれない場面に立たされて、何かをすることで自分の枠を広げていくような体験だった。
たとえば、これまでの自分の人生の中で価値観が変わったことを思い出して、それをあらわす3つの絵のカードを選ぶ。そしてその価値観を表現する万華鏡(カレイドスコープ)を絵に描くという課題だ。絵で自分を表現するなどしたことがない私にとって、描くこと自体が新鮮だった。

news20170220-icl02
価値観を表現する万華鏡(カレイドスコープ)

4.5日間の研修の中でのハイライトは、最後の日のtrain backセッションだった。これまでの研修で異文化理解の内容やトレーニング方法を学んだ後、今度は自分が実際に研修を準備して45分間の研修を行うのだ。
私は香港のホン(60歳男性)と、タイの中学で詩を教え、ベストティーチャーに選ばれたことのあるタッシー(女性)と3人で文化の概念と文化モデルについてのトレーニングをすることになった。12人がそれぞれ2-3人の組になって、夜遅くまで準備をした。
チーム自体が異文化混合なので、最初から進め方をめぐって何をするか、どこまで細かく決めるか、焦るかそれとも気楽にやるかで意見が合わない。でもいろいろ話しているうちにどこかで妥協点が見つかり、少しずつ形ができはじめる。

全体を通して、私にとって一番新鮮だったのは、教えるのではなくて学ぶのをどのようにサポートするかということだ。日本では、小学校から大学まで教えるという発想だけれども、ICLは参加者が自ら学ぶことが前提になっている。レクチャーではなくて、学ぶのをサポートするにはどんなやり方があるのかを今回の研修で学んだ気がする。

news20170220-icl03
train backセッションの前日の準備風景

たとえば部屋のスペースの使い方についても、教室スタイルで一方向だけを向くのではなく、四方の壁や窓、床もすべて使う。
パワーポイントでなく、手書きで紙に書くフリップチャートを使う。でもすべて手書きにすると時間がかかるので、決まったことばや概念はあらかじめ色画用紙にマーカーで書いておき、テープでそのつどフリップチャートや壁や床に貼る。
またトレーナー自身が部屋の中を移動し、身体や表情で表現し、全員とアイコンタクトをとる。参加者をいかに参加している気持ちにさせ、取り残されている気分にさせないかに気を配るなど、これまでの「教える」スタイルとは全く違うやり方が行われていた。

また参加者についても、恥ずかしい気持ちは私だけでないらしく、それぞれ普段とは異なる自分を表現するための努力をしていた。
母国語ではない英語を使うことと、自分の殻を破る難しさを私だけでなく、他の国の人たちも若い子も感じているんだと知って良い刺激になった。このような貴重な機会を与えてくれたAFS日本協会に感謝したい。

松岡悦子(AFS奈良支部)

▼ボランティア・職員の異文化学習


この記事のカテゴリー: 教育 インド AFS活動レポート

この記事のタグ   : 研修