「留学なんて行ってみたら何とかなるよ。」私はそんな言葉を何度も聞いてきた。しかし私は今そういう人の話をそんなことはないと思いながら聞き流している。仕方のないことだ。私も留学のことについて他人にアドバイスをするならきっとそう言うだろうから。
しかしまたここではドイツでの11ヶ月について書かなければいけない。自分はここで主張する機会を得ることができて内心嬉しく思っている。口で主張したとしても、それはなかなか記憶に残らないし、それだけ顧みることができないからだ。

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ドイツでの暮らしは、非常に悠然としていてそれでいて規則的であった。中世の暮らし、とでも形容できると私は思う。物を大切に扱い、家族との絆を深め、勿論友達や知人も温かく受け入れる。そんな何か自分に欠けている大切なものに触れる時であった。
それと同時にあちらの世界でのスタンダード、言葉の意味についての概念や、ある事象に対する考え方、自己意識の違いなどを学ぶことができ、非常に興味深い日々であった。それによって鏡で自分を見るように日本のこと、自己のことを見つめ直す機会を得ることもできた。

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学校までの道程、エルベ川沿いにて

辛いことも勿論数え切れないほど記憶している。
言語について、英語はまるで通じない環境であったし、ドイツ語も無知であり、ジェスチャーから辞書、絵を描いたりと、ありとあらゆる手段を活用して必死に自分の思っていることを伝えた。わからない単語を聞いたら手に書いて覚えていたりもした。
学校については非常に苦労した。殆どの生徒、先生ともにアジア人、日本人についての理解がなく、多少人種差別的な発言もあった。そのためクラスでは殆ど友達はできなかった。それでも親身になって助けてくださった先生もいたり、別の国から同じAFSで留学してきた外国人と仲良くなってドイツ語でコミュニケーションを取ったりしていたため有意義ではあった。しかし、クラスでの雰囲気と自分に対する嫌悪感、軋轢は拭い去ることは最後まで出来なかった。

そうして憂鬱な日々もあり、落ち込むことも多かったが、そんな自分が通して頑張ることができたのはホストファミリー、友達、AFSのサポーターさん方、そして日本での家族のお蔭だと思う。「ありがとう」と感謝の言葉を述べるだけではなく、いつの日か「行動」によってこの恩を返していきたいと思う。さしあたってこの文章を起こすことが最初の「行動」となっただろう。

最後にこの作文の表題について言及しておきたい。人と違うことをするということは奇を衒うことであり、人に忌まれることでもある、と私は思う。しかしそうして危険を伴うだけ見返りも大きい。出る杭は打たれるなんて言うが、そんな古い概念は早急に捨て去り自己の好奇心に逆らうことなく突き進んでいくことは大事だと思った。
また、そうやって切磋琢磨してゆく中で、新しい自分が見つけられるのだと思う。特殊なことをすれば前述したように忌み嫌われ、失うものもあるだろう。しかしいつの日か理解してくれる時が来る。人と違うことに挑むとするならば、そんな意気込みを持って欲しいと私は考える。それはなにも留学に限ったことではない。

2014年3月 ドイツ派遣
AFS60期生/ボランティア奨学生 宮武知礼

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