「留学どうだった?」と沢山の人に聞かれたとき、一言や二言では説明できなくて、何と言ったらいいのか分からなくなり、いつもしばらく黙ってしまいます(笑)
私が過ごした1年は、 それほど中身の濃い留学生活でした。帰国して1カ月、あまりにも呆気なく日本での生活がまた始まり、いわゆる「逆カルチャーショック」などもないので、1年間タイにいたということがたまに信じられません。

rep20160520_tha01
”先生の日”

牡蠣にあたって入院したのも、ホストファミリーと深夜まで大喧嘩したのも、登山に行って一生忘れない景色を目にしたのも、毎週末小さいシスターたちを連れて海に遊びに行ったのも、そうやって泣いて笑って毎日を生きた留学生活の主人公は、確かにこのわたし。
世界のどこかの誰かの物語を読み終えて、余韻に浸っているような、今はそんな気持ちです。

私が一番苦労したことは、「物事を率直に言えないJということでした。タイの文化では、自分が思ったことはすぐ口にせず、年上や地位の高い人に合わせて意見をいいますし、人々は よく遠慮をします。これらが美徳とされていて、なんだか日本の文化と似ていますよね。

rep20160520_tha02
ホストファミリーに18歳の誕生日を祝ってもらいました

滞在4カ月目を過ぎたころ、色んな事情が重なり、私とホストファミリーでファミリーチェ ンジについての話をしました。ファミリーは、「あなたが変えたいのなら、ホストチェンジを していいよ」と伝えてくれました。
だからわたしは当然ファミリーがホストチェンジについて賛成なのだと受け取り、嬉しかったです。それと同時に、チェンジをすることに少しも反対されなかったので、もう私にここに居てほしくないのかもしれないと残念な気持ちもありました。

いざ新しいファミリーが見つかり正式に移動すると伝えたら、彼らはひどく腹をたててしまいました。わたしは状況が理解できず、彼らを悲しませてしまったことに申し訳なかったし、あの状況をどう改善していいのか分からず、ただただ泣いていました。
ファミリーとしては、本当はホストチェンジをして欲しくなかったけど、わたしのことを思ってあのような答え方をしたのだそうです。それでも、彼らの話し方や雰囲気でわたしに彼らの本当の考えを察っして欲しかったようです。

rep20160520_tha03
「先生の日」には、生徒が日頃の感謝と尊敬する思いを伝えます。ジャスミンの花をあげたり、先生からはミサンガをもらったりします。

この経験から学んだことは、率直な意見を言う必要があるときにはそれを伝えるべきで、さ らに互いを尊重しあうのを忘れてはいけないということです。
わたしのファミリーが私のこれからの留学生活を思って優しい返事をしてくれたことはとても嬉しかったです。でもその時に 彼らの本当の気持ちを知ることはできませんでした。話し合いなどでしっかり事を進めていくには、率直な意見は必須です。
その意見を言うときに、思いやりがあると、お互い気持ちよく終われますし、お互いの真の理解に繋がるのかもしれません。

ファミリーチェンジに限らず、辛いことは幾度とありましたが、そんな状況で支えてくれたのは世界各国から届く手紙でした。わたしが留学生活を通して得た形に残る宝物です。留学中は文通でのみ日本と連絡を取っていましたが、大学受験で忙しい同級生や、同じ年に留学していた日本人の派遣生、色んな方から沢山の手紙が届き、それら一つ一つがわたしの励みになりました。
二人の親友もAFSを通じて留学していたので、タイ、チェコ、パラグアイと一冊のノートに自分たちの経験をつづっては世界中を旅させていました。文通は連絡を取るのに時間がかかりますが、問題が起きたときにすぐ人に答えを求めず、自分で考えて行動できました。
友達に手紙で悩みを打ち明けても、その返信が返ってくる頃にはもうその悩みは解決されていました。この時代に敢えてインターネットを使わずに連絡をとったことはとても良い選択だったと思います。

rep20160520_tha04
私が住んでいた町にある山に登りました。頂上から360度見渡せる海は最高でした。

留学中は楽しいことばかりではありませんでした。
言語習得の八ードルは想像以上に高く、 現地に住んでいれば話せるようになるだろうという考えは甘かったです。
本当の家族ではない人と一つ屋根の下で暮らすこと、自分の言葉が通じない国の学校で1から友達を作ること、見た目が同じアジア人だから文化が分からなくともタイ人として扱われたこと、大変なことは山ほどありました。でもふと振り返ってみると地道にその苦しい壁を乗り越え、少しずつ自分の自信に繋がりました。

わたしの体験談を読んでいるとなんだか切ないことが沢山書いてありますが、楽しいことや 幸せな思い出も書ききれない程たくさんあります。この一年間で沢山の人に出会って、景色を見て、聞いて、食べて、匂って、第二の故郷を感じてきました。
勇気を出して、一歩踏み出して全力で感じた世界はアツかった。

2016年4月 クン・サナン奨学金受給生
AFS62期 タイ派遣/  吉田早織

▼留学レポート マイペンライの精神から学んだこと

▼高校生・10代の年間留学プログラム
タイ年間留学情報 タイ国別情報


この記事のカテゴリー: タイ | 年間留学体験談