5月12日の「AFS友の会ネットワーキングの集い」ではトランスジェンダーの杉山文野(すぎやまふみの)さんをお迎えし、「LGBTと国際交流~性の多様性と人権」と題して講演して頂きました。

AFSは1993年の世界会議で採択したその理念で「AFSはすべての個人すべての国と文化に、それぞれの尊厳と価値があると確信し、その考えが広く確立されるよう努力する。そして、人種、性、言語、宗教、社会的地位の違いとは無関係に、人権と基本的自由が尊重されるよう、その実践を推進する。」と唱っています。
杉山さんの講演は、そのAFSの理念を具現化する意味でも、私たちそれぞれがもっと知識を深め、意識を高めなければならないと自らを振り返る、貴重な時間となりました。

【講演要旨】

杉山さんは幼少の頃から体と心の性の不一致に悩み、苦しみ、なんとか逃れられないかと模索してきました。しかし、世界各地を歩き、南極にまで行っても決してその苦しみから逃れられないことに気づきました。
中学から高校へと身体も自我も急速に成長する時期がもっとも辛く、女性として生きていくことが苦しかったそうです。男性になる道を見いだせず、その辛さは極限状態でした。
とにかく学校には行かないといけない、それでも自分の悩みを周囲に知られてはいけないという恐怖感が常にありました。

1990年代になり、「性同一性障害」という言葉が世の中に登場すると、自分だけではないという安心感が少しずつ芽生えてきました。これまでの辛い、苦しいという感情は自分自身の成長の栄養素になっていたと前向きに捉えることができるようになりました。

LGBTのLGBは対象として関心の向かう性がどちらか、ということです。そしてTは自分の体の性と心の性とが一致しないということであって、本来は障がいではありません。
普通の障がいは周囲から見えるものですが、LGBTの場合は、当該者が発信しない限り周囲には見えません。LGBTの出現率は人口の5~8%と見られ、日本ですと13人に1人、あるいは左利きの人の確率くらいと考えられています。
私たちが気づかないだけで、決して珍しいことではないのです。ですから、LGBTを単に性行為の話の延長として捉えるのではなく、正しく理解することが大人のマナーであり、教養であり、また政治レベルの問題にもなります。

まず、LGBTはアイデンティティにまつわる話ですから、子供の頃から正しく理解させ、当事者を苦しませないためにも、思いやる心を持たせることが必要です。
アイデンティティを正しく理解することによって、社会生活や職場でも当事者を悩ませることなく生産性を上げていくことが可能となります。

日本には、LGBTの人たちがカミングアウトする土壌がまだまだできていません。
カミングアウトできないのは居場所を失うのではないかという不安が常につきまとうからです。その不安を除去していかなくてはなりません。
LGBTはセクシュアルマイノリティと呼ばれますが、誰であっても別の何かの分野ではマイノリティになることもありうるわけで、常にマジョリティの側で安穏としていられるとは限らないのです。

トランスジェンダーへの対応に関しては、判断に主観が入りマニュアル化できないのが難しいところです。
マイノリティの人たちのカミングアウトを正しく受け止める「ウェルカミングアウト」を心掛け、状況と気持ちを正しく理解することが大切です。
究極のゴールは、多くの壁やハードルを乗り越えて周囲の人が理解すること、そして人それぞれが多様な選択、多様な生き方のできる、多様性に寛容な社会へと繋がることです。

井上裕雄 (25期 1978~79 USA)


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