AFSでは、70年以上実施してきた高校生の交換留学事業から培ったノウハウを活かし、国際理解の推進やグローバル人材を育成する講座を実施しています。
この度は、兵庫県明石市の国立明石工業高等専門学校にてワークショップを用いた出前講座を行いました。参加したのは同校で「Student Ambassadors」として活動する学生の有志団体で、キャンパス内外で積極的な国際交流活動を行っています。

今回の講座では、「異文化力を育む」ことを目指し、AFS日本協会がこれまで培ってきたノウハウを活用して、「異文化理解」や、近年話題に上るキーワードである「グローバル・コンピテンシー」とは、いったいどういったものなのか、などについて、同校の学生と、同校で受け入れている留学生が一緒に考えました。

本講座では、「異文化環境への適応」のためには、ある「道のり」が存在することを紹介しました。
英語や他の言語が自由に操れるようになったからといって、一足飛びに異文化環境になじめるわけではありません。その道中には、様々な葛藤や拒絶のような感情を抱くなど、いくつかのステージが待っています。

それを乗り越えていくときに、有効になるのが「国や様々な文化的背景によって、一定の傾向がある」ということと「国や様々な文化的背景によらず、一人一人を見ると、全く異なる性格や考え方を持っていることがある」という、一見相反する2つの考え方です。
近年では、テレビ番組などでもテーマになることがありますが、例えば、国や地域によって、「個人主義的」か「集団主義的」かという、ある程度の傾向が見られることは事実です。これを把握しておくことによって、「相手の考え方が、どのような文化的影響を受けているのか」を想像することができ、「なぜ、自分と異なるのか」を受け入れやすくなります。
一方で、例えば「日本人だから、みんなシャイでおとなしい」というように、ある国の人・文化の人全員をひとくくりにして、性格や特徴を決めつけられてしまうのは、誰にだって抵抗があるのではないでしょうか。実際には、日本人でも明るく社交的な人もいますし、陽気な国と思われているところでも、恥ずかしがり屋で控えめな人もいます。一定の傾向があることとともに、そこに必ずしも囚われないで、一人一人の「個性」を認めて受入れることもまた、大変重要なポイントです。

講座の最後には、同校に通う2人の留学生が、自身の留学中の経験を振り返りました。
偶然にも、2人とも、母国では今よりも攻撃的な一面があったそうで、自分の意見を押し通そうとして、クラスメイトとも衝突を繰り返していたそうです。しかし、日本に来てから、周囲の友人に影響され、自分の意見と異なる場合でも、まずは相手の考えを聞くことを学びました。そうして、以前よりもずっと穏やかに冷静な判断ができるようになり、大きく成長することができました。
留学生の口から直接語られる思いや、体験の振り返りを、みんなと共有することで、この場にいた全員が「異文化適応」の実態に触れることができました。

こうした「異文化に適応する」ための過程を経ることは、「グローバル・コンピテンシー」を育むために、非常に効果的な手段となります。
今日、この場の参加した学生の皆さんは、AFS留学生を校内で受入れることで、「異文化適応」のステップを(知らず知らずのうちに)積み上げてきました。この講座は、そのプロセスを整理し、自身の中で理解する助けになったことでしょう。


AFS日本協会では、国内の学校現場における国際理解教育プログラムの提供を行っています。ご関心のある学校・先生方は、ぜひAFS日本協会([email protected])までご連絡ください。

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