AFS日本協会は1954年に第1期生として8名の日本人高校生を米国へ派遣してから、2019年で65周年を迎えました。それを記念して、2019年10月27日に、東京・国立オリンピック記念青少年総合センターの国際会議室およびレセプションホールで、記念式典・レセプションを開催しました。

第一部の記念式典では、AFS生として日本で学び、現在、エコノミストとしてご活躍のロバート・フェルドマンさんより、「高校留学がもたらすインパクト、異文化体験の重要性」と題し、基調講演をいただきました。モルガン・スタンレー・MUFG証券株式会社のシニア アドバイザーであり、東京理科大学大学院経営学研究科(技術経営専攻)教授、TVコメンテーターとしても著名なロバート・フェルドマンさん。実は、1970年にAFS生として来日し、愛知県の高校で1年を過ごされたAFS経験者の一人です。語学の習得は早いほうがいいと話しつつ、フェルドマンさんが強調したのは、10代での留学には「言語だけでなく、内面的にも柔軟な時期であることに価値がある」という点でした。

続いて行われたパネルディスカッションでは、現役の留学生2名とプログラム体験を自分の進路・キャリアに活かしつつある2名も加わり、高校生での留学がもたらすインパクト、異文化体験の重要性について、それぞれの視点から話し合いました。

「いま」を楽しむ

自身が感じる日本のイメージと親戚が語る日本に対する評価の違いから来日を決意したと語るアイリーンさん。アメリカからのAFS生として来日しました。「日本=東京」のイメージがあったそうで、「帯広に配属と聞いたときには正直がっかりした(笑)」とのことでしたが、弓道、茶道、美術の部活を掛け持ちし、楽しく生活していることを生き生きと話してくれました。

2019年アジア高校生架け橋プロジェクトのAFS生として、タイ北部から来日したキーラティーくん。タイで見た日本のアニメに感動したことから、日本に関心をもつようになり日本語を学び始めたとのこと。ホストスクールは県内でも有数の進学校のため、勉強に励むクラスメイトを前にして、最初は友達づくりに苦労したそう。でも、気負わず生活している中で、次第に友だちができたようです。「成功者になるためにはたくさんの経験が必要!」と、何にでも貪欲にチャレンジしていることを話してくれました。

留学をきっかけに、問題意識が生まれた

一方、日本から海外に留学した経験者として登壇してくださたのは、ご両親も高校留学経験者だったという甘利さん。みんな経験しているから大丈夫だろうと思ってチリに出発したところ「想像以上にタフな経験だった」そう。しかし、現地での体験をきっかけに、機会が均等になる社会を築くにはどうしたらよいかに関心が向いた、と語ります。進学した大学では奨学金を経て、今度はカナダに留学。現在は、日本の高校生が積極的に海外に出て多くの経験を積めるようサポートをしながら、途上国の経済的な発展戦略を分析する開発経済学を学んでいます。

支えてもらわなければいけない、10代だからこそできた経験

「留学するなら生活に密着した高校留学!」と語ったのが、現在、大使館で働いているラウラさん。ラウラさんは、フィンランドからのAFS生として北海道に滞在してから、大学時代の留学を含め、何度も来日している一人です。日本への想いは深く、今では永住権をとりたいと思っているほどだそう。ラウラさん曰く、大学での留学はフィンランドの生活をそのまま日本でしているような感じだったとか。
高校での留学については、いい日本語の先生に出会ったおかげで日本語は早く上達したそうですが、「日本文化への理解が伴っていなかったことから誤解や衝突もあった」と当時を振り返りました。そのようなときにいろんな人に助けてもらった経験から、将来日本に貢献したいと思ったそうです。すでに、両国の発展的な関係構築の道を歩み始めているラウラさんですが、日本が抱える問題にはフィンランドの経験や文化を活かせる部分があるのではないか、Win Win の関係になるように貢献したい、とさらなる夢を描いてくれました。

日本での経験をきっかけに経済学の道へ進み、イェール大学で経済学・日本研究の学士号、マサチューセッツ工科大学で経済博士号を取得されたフェルドマンさん。ディスカッションの最後には、「世界には環境問題など、みなが協力して解決しなければいけない問題がたくさんあるが、そのためにはコミュニケーションが極めて大事である。相手の言っていることを最初から否定しないで受け入れる姿勢、異文化理解力が欠かせない」と力説。夏に開催されたラグビーのワールドカップ日本代表に見られるように、多様性・外国人を受け入れることが力になることにみんな気付いたのでは、と語られました。

高校時代のAFS留学がもたらす異文化体験が、いかに将来への夢につながるのか、それぞれのご経験から熱く語ってくださった皆さんを前に、大きくうなずく姿も。大いに盛り上がったディスカッションに、会場からは大きな拍手が送られました。

国、地域、世代を越えた交流

第二部のレセプションでは、日頃お世話になっている官公庁、諸団体、奨学金や寄付で活動を支援くださっている企業、そして、ホストファミリー、ホストスクール、AFSの異文化理解活動を支える全国各地の支部ボランティアと、来日中の留学生、またOB・OGが一同に介し、国や年代を越えて、多いに語り合いました。

国や世代を越えた交流ができるのは、AFSの魅力のひとつです

当日の参加者は、400人近くにのぼりました。しかし、AFSのコミュニティには、日本だけでも数万人、世界では数十万人の仲間がいます。1954年にはじめて日本の生徒を米国に派遣して始まったAFS日本の活動は、多くの皆さまに支えられ、共感をいただき、現在に至っています。多様な人種、文化の背景を持つあらゆる世代の人々が、身近な生活の場面でも世界でも、みずから行動して前向きな変化をもたらすことができるように。平和で公正な世界のために。これからも、皆さまとご一緒に、歩みを進めていけることを願っています。

65周年冊子 We Develop Active Global Citizens  (PDF/3.83MB)

活動レポート: 65周年プロジェクト「歴史発掘インターン」


この記事のカテゴリー: AFS活動レポート