今回のスピーカーはYP61期イタリア派遣生でドキュメンタリー映像作家の小西遊馬さん。25歳という若さで、国際平和映像祭でグランプリを受賞、ロンドン映画祭やアジア映画祭でも入賞するなど映像制作で数々の実績を築く一方、自らクラウドファンディングやNPO参画により社会プロジェクトでも活躍。誰しもいったいどんな人なんだろうという思いだったに違いありません。何の準備もなく、ネットカメラの前のその場で自分に向き合いながら口から出てくる等身大の語りは100分を超えるものとなりました。

制服や髪の毛の長さなどの校則に嫌気がさしていた中高時代、母親(AFSのアメリカ派遣生)の勧めもあり高校留学を考え、人と同じことはしたくない性分でイタリアを選択。素行の悪い問題児と自称する小西さんがイタリアで遭遇したのは当時アフリカやシリアからヨーロッパに押し寄せる多くの難民。そこで彼はひとりのリビア人難民と出会います。友情が芽生えていくなかで悲惨な難民の体験を涙ながらに聞かされるが、何も感じられず、どう答えていいのかわからない、何の役にもたたない自分、その時の思いが帰国後の8年間、小西さんを突き動かすことになります。

ロヒンギャ難民キャンプ、そして香港の民主化運動まで、それぞれが臨場感あふれる鋭い映像。数々の受賞、輝かしい活躍の裏で小西さんはどの現場でも常に当事者ではない第三者でしかない限界を感じ、絶望してしまいます。そして4か月図書館に籠り人類の誕生から現代史までの歴史を再整理、すべては一瞬の出来事と捉えられるようになり、映画「ホタル」のセリフのひとつ、「人が人にできることは一緒に泣いて一緒に笑うこと」に共感し、絶望から解放されたとのこと。きっとリビアの友人との宿題も果たせたのでしょう。

小西さんは自分たちを競争社会のなかで常に自らの存在意義を証明することを求められる世代だと捉えています。その中で愛を語る大切さ。いま小西さんは上述の通り一つの解をみつけて新たにNPO活動に邁進されています。

AFS友の会は 25年前に藤野隆弘さん(初代会長)と私も加わって創設しました。派遣生、ホストファミリー、ボランティア、ホストスクール、地域社会、AFS活動に接点をもった方々全てを結び付け、経験を共有し、AFSを支援していく趣旨で「友の会」と名付けました。時代の変遷に伴い高校留学の意義も少しずつ変化しているのと同様、異文化交流という軸足は変わらないとしても、個々の経験やその後の展開は過去には想像も及ばないぐらい多様化しています。今回の小西さんのプレゼンは、その内容も語り口も新たな時代への変化を如実に表しています。AFS友の会は時代の要請に応えながら、今後も進化続けていきます。これからも皆様のご参加をお待ちしています。

吉田弘和 (AFS友の会運営委員、 AFS友の会創立メンバー)

※講演中に投影された写真は小西さんから掲載の許可をいただいています


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