私は、AFS54期フィンランド派遣生です。この度、2人の小さい子供と妻を連れて家族全員で約17年ぶりとなるフィンランドへの里帰りをしてきました。
なぜフィンランドに留学に行ったのか。
この質問は非英語圏、特にいわゆるマイナー言語が話される国を留学先に選んだ人ならよくわかると思いますが、本当によく聞かれ、回答に困るものです。
「誰も行ったことのない国で、普通には経験できない体験をしたかったから」
「何も言語がわからないゼロの状態から自分を試してみたかったから」
というのがとりあえずの私の回答ですが、いずれにせよ言葉に表すのが難しい魅力がそこにはあると思います。

とはいえ、妻も子供たちも行く前までは私がどれだけ魅力を伝えてもいまいちピンと来てないようで「いつか行こうか」ぐらいにしか思っていなかったと思います。
それもそのはず。子供たちは英語ですらほとんどわからない上に長時間フライト、私にとっては恩人でも彼らには初対面の知らない人なのですから。
また、実のところ私自身も苦労して覚えたフィンランド語を思い出しフィンランドの家族、友人と留学していた頃のように話せるか心配でなりませんでした。
「外交官になりフィンランドと日本の架け橋になる」と言い続けていた私にとってフィンランド語は「ガイジン」ではなく「家族」「友達」である証と思っているため、どうしても英語に逃げたくなかったのです…。

みんな楽しく過ごせるか、妻と出国の日まで不安で仕方ありませんでしたが、その不安は17年ぶりの再会の瞬間とともに消し飛びました。
心配性でいつも子供たちのことを気にかけてくれる優しいお母さん。
冗談ばかり飛ばしてお茶目で楽しいお父さん。
お互いに話したいことや想いがあふれすぎて何から話せばいいのかわからず、お互いに手探りな中で始まった再訪問。
再会したときのお互いの表情、感情は何とも形容し難いもので17年ぶりの想いにグッと胸が熱くなりました。

心配していた子供たちはというと、最初は13時間の長時間フライトで最初こそ時差ボケにひどく苦しんでいましたが、ホストファミリーに「森と湖の国」の醍醐味のサマーコテージに連れて行ってもらってからはベリー摘み、焚き火、魚釣り、サウナ、サウナからの湖ダイブ、湖畔遊び、とにかく新しい体験の数々に夢中で時間を忘れるぐらい楽しんでいたと思います。
更に、言葉こそよくわからないはずですが、いつの間にかホストファミリーの親戚のところの女の子とも仲良く遊んでいてその様子をホストファミリーと感慨深く眺めていました。

不思議なものでたった1週間程の滞在でしたが、いつの間にか17年前と同じような気持ちでゆったりと過ごしている自分もそこにはいましたし、妻も子供たちも「家族」として受け入れられて自然と一緒に過ごせていることに驚きと何とも言えない感動を覚えました。
長女はホストマザーに対して、「色々とありがとう。楽しかったよ。」ってフィンランド語で何て言えばいい?と私に聞き、メモ帳に覚えたてのカタカナでルビを一生懸命書き留めながら何回も何回も一緒に練習しました。
「伝えられた!」、「伝わった!」ときの何とも言えない無邪気で嬉しそうな姿は、17年前に何もわからないところから何とかコミュニケーションを取りながら必死にフィンランド語を覚えた自分に重なり、なんだかジーンときてしまいました。

ちなみに今では長女は「誕生日プレゼントはフィンランド(行きのチケット)がいい」と言うぐらいフィンランドのことが大好きになり、私にとって「宝物」ともいえる存在であるフィンランドの家族のことを大好きになってくれて、悩んだけれども17年もかかったけれどもみんなを連れて帰る決断をここでして本当に良かったと思います。
これで終わりではありませんが、長年に渡り私の心に引っ掛かっていたフィンランドへの想いが一つ実を結んだ気がして、また更に色々と頑張れる気がしています。

まずは、今すぐにでも自分の大切な人に会いにいくこと。たとえ、それが忙しくても子連れでも思い立ったときに会いにいく。これが何よりも重要だと思います。
良いタイミングなんて待っていてもいつになるかわからないのですから。
今度は17年と言わず2〜3年後を目標に冬のフィンランドに行き、サンタ村に家族を連れて行ってあげたいと思います。
AFS54期(2007-2008年)フィンランド派遣生