<はじめに>

AFS生として留学した1970年代半ば、支部活動の中心はリターニー(留学帰国生)の大学生でした。ホストファミリーのインタビュー、英文の書類作成、学校訪問、留学生の世話、派遣生・帰国生・保護者のためのパーティ、サマーキャンプ、月に一度の支部会、偉大な先輩たちと一緒に何かできることが喜びでした。帰宅が深夜になっても、「AFSの会議」は、我が家では水戸黄門の印籠と同じくらいの効力を持ちました。あの人たちと一緒なら安心だと。企業に寄付をいただきに回るのも大学生の仕事で、当時のトヨタ自動車販売、中日新聞、丸栄百貨店など、大会社の本社に出向いて「偉い方」の手から直接2万円のご厚志を頂戴することができたのも、今となっては良い思い出、毎日が濃密な学びにあふれていました。

自分が知るこの40年で、AFSを取り巻く状況は一変しました。名古屋で初めてのICL(Intercultural Learning=異文化学習)の基礎研修・レベルW、国際本部のオンラインセミナー、東京のファシリテーター勉強会などに参加してみて、普通の高校生の個人的体験であったAFS留学の変化を目の当たりにしました。
そんな時に、日本協会からNQT(National Qualified Trainer=国内認定トレーナー)研修に参加の呼びかけがあり、応募しました。研修の内容は、すでに他の参加者の皆さんが寄稿していらっしゃるのと同じで、すべて手作り、手書き、自分で考え、自分で発信する双方向の研修でした。材料も資料も基本は同じです。そこで、ここでは、2月に認定の修了証を受け取るまでの5カ月間の道のりについてご報告します。

<エジプトへ>

応募したのは8月1日のことです。2名の枠に手を挙げたのが自分一人だったと分かったのが1週間後、国際本部から参加OKの返事が届いたのがさらに2週間後、AFSエジプトから到着時刻を指示する連絡が入ったのは9月初旬でした。20日からの研修に向けて、娘を旅の道連れに、中部国際空港から北京、アブダビを経由してカイロ行のチケットを手配しました。
結果的に、彼女がいてくれて大変助かりました。というのも、ナイル川の水には寄生虫がいるから生水を飲んではダメ、歯磨きもペットボトルで、シャワーの水が口から入らないように気をつけて、という毎日。朝のホテルでのビュッフェを除いて昼食と夕食はすべてケータリング、コンビニなし、お店なし、外に出るのは、住宅街に位置するAFSエジプト事務所とトゥクトゥクで5分のホテルとの往復のみ。毎日のセッションについていくだけでやっとの毎日の学びの中で、若いエジプト人のアラムナイと楽しくダウンタウンでお茶したり、考古学博物館に出かけたり、マーケットに行ったり、イスラム寺院のお祈りに連れて行ってもらったりした体験について話してくれる彼女には本当に癒されました。
出発直前になっても資料が来ないので焦りましたが、出発当日にカリキュラム資料とアジェンダがメールで届きました。以下簡単に、NQT研修の3つのステップについて記します。

Step 1 エジプトでの研修(9月20日~23日)

お昼過ぎにカイロ到着。若い10代の若者(アラムナイ)二人が空港に出迎え、Uberに乗せてくれてホテルに直行。懐かしい日産サニー―AFS19期で東海支部長だった後藤さんの愛車―で1時間、文字通り縫うように走る。運転手に英語は通じず、途中走っている車からタイヤが外れた時に同じリアクションをして笑い合ったのみ。遠くに一瞬ピラミッドが見えた。AFSフランスからの参加者Celineとホテルで合流、一緒に事務所へ。研修開始は夕方5時。AFSエジプト事務所は、カイロ近郊ギザ地区の高級住宅街に位置し、看板も出ていない。

AFSエジプト事務所
バーベキューのできる屋上。4階で研修をしている間に派遣生のためのレセプションをしていたらしいが、全く知らずにいた

参加者はトレーナー3人(ドイツのAnnette、エジプトのFareedaとGermine)と8人の受講者(AFSエジプトの5人、AFSチュニジア事務局長のLeila、AFSフランスのCeline、私)で、エジプト人帰国生のFarahが最年少であった。エジプト人全員が、英語が堪能なのに驚いたが、皆インターナショナルスクールの出身で、AFSが限られた上層階級の人々のものだという思いを新たにした。
全員が事務所に缶詰めで4日間の研修を終え、最後の夜は全員が夜更かしで翌日のトレイン・バック・セッションの準備をして最終日を迎えた。この間、イスラムの女性たちと一緒に過ごし、「イスラム教徒だけど寺院には一度も行ったことがない」と言うノースリーブでミニ丈のワンピースを着たFareedaと、お祈りを欠かさないSoniaにイスラムの文化次元の幅を実感。

20℃に設定された部屋から外に出て、テラスで強い太陽光を浴びながらエジプト料理を食べるのが毎日の楽しみに。ボランティアのホッダがケータリングの量と値段に毎回頭を悩ませていた
研修を終えて全員で記念撮影。 フランスへ、チュニジアへ、日本へ、そしてエジプト人スタッフは平常業務へ AFSエジプトは会計だけが男性であとはすべて女性スタッフ。3階の広々とした研修室は、壁面がすべてホワイトボード、館内にはエレベーターもあって各階に給水機とトイレがあり、小規模ながら恵まれた環境だった

Step 2 学習セッションの作成(10月上旬~11月上旬)

エジプトからの帰国後半月経った頃、NYからトレイン・バック・セッションの評価と研修についてのアンケートが届く。同時に次のステップとなるLSO(Learning Session Outline=学習セッション)提出についての説明も届く。締切は半月後。カイロで行った45分のコミュニケーションスタイルのセッションを、90分のLSOに仕上げる。締切当日に送信、時差に感謝。11月上旬、NYからスカイプでのオンライン・コーチングを受け、その後、LSO最終案を提出。

Step 3 質問表の回答~修了(12月中旬~2月下旬)

12月中旬、最後のステップ開始のメールが届く。質問票の回答にかかる時間は、平均4時間で、提出期限は1月上旬。誰に相談してもいいが、文章は自分のことばで記入することと念押しあり。老体に鞭打って格闘の末、締切当日に提出。再び時差に感謝。
ちゃんと届いたのか?と心配し始めた2月23日、Step 2およびStep 3の評価とともに修了書が届く!

<おわりに>

文字通りの「異文化」の中で異文化理解のための研修を受けさせていただきました。気がつけばグループで自分が最年長という初めての経験でした。ほとんどサバイバルのような毎日に圧倒されましたが、今後、これを還元していくことが大切と思っています。
より多くの皆さんに、できれば自分の知らない国で、ぜひ経験していただきたい研修です。ある程度の読む・聴く・書く・話す英語力は必須なので、念のため申し添えます。

佐々木裕美

▼ボランティア・職員の異文化学習


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