10代後半の多感な時期に日本を離れ、異国の地で約1年間生活することで得られる恩恵は計り知れません。当時、感染症の影響で閉ざされた世界の中、幸運にも巡りついたポルトガルの田舎町で過ごした10ヶ月間は私にとって本当に特別なものです。

リスボンにて

初めて進路について深く考えたのは中学3年の夏が終わる頃でした。東京で生まれ育ち、サッカー部を引退したばかりの私にとって、高校は学生時代という長い階段の中腹にある中学校の延長線的な存在でした。ふと、将来について考えると、自分が何をしたいのかが分からず、不安が押し寄せてきたことを覚えています。そんな時、漠然と感じていたことがあります。

津和野の雲海

それは「自分の生まれた街で大人になりたくない」というエゴのようなものでした。そこで私は東京から出てやろうと単身で寮に入れる高校を探し、生まれた町から極力正反対な環境がありそうな島根県の高校を選びました。高校があった津和野の街は森鴎外や西周の出身地でもあり、東京で猛威を奮っていたコロナの影響も少なく、高津川で鮎をとったり、早朝に津和野城跡まで登山して日の出と雲海を見たりして過ごしました。その中で流れる時間の感覚やiターン移住者との交流を通してコミュニティの規模など、都市部と地方のギャップを体感し、非常に面白いと感じました。そうしているうちに国内でこんなに価値観の差があるのなら、日本を出てみるともっとワクワクするだろうと思い、留学を志しました。しかし、当時の高校では留学の機会が無く、困っていたときにAFSに出会いました。海外経験が豊富でもなく、外国語も苦手でしたが、好奇心に背中を押されて東京と島根のように日本の反対はどんな国だろうかと悩み、今度は日本から極力遠い国を選んで出会ったのがヨーロッパ最西端のポルトガルです。

派遣先の街並み(Proença-a-Nova)

ポルトガルに到着して最初の数日は学校が休みで、日中はホストファミリーとその友達家族とサッカーやバレーをして過ごしていました。街には公共の広場があり、身体を動かしてクタクタになるまで過ごす日々が続きました。家に帰って食べるホストマザーの料理は空腹も相まってとても美味しかったです。ポルトガル語がまだ喋れなかった私は、生活しながら現地の人の言っていることをまねてジェスチャーを使ってコミュニケーションをとりました。スポーツは言葉が通じない彼らとの交流の第一歩であったと振り返って実感します。

サッカーをしていた現地のコート

留学生活の中心は学校で、授業も全てポルトガル語で行われました。学校初日は自己紹介ができるか心配でしたが、先生は席の場所だけ伝えて授業を始め、休み時間にはクラスメイトが思い思いのことをしていて期待を裏切られた気持ちでした。全校集会での紹介なんてないまま、自分から話しかけて友達を作ることが当たり前だったことに驚かされ、留学中にメンタルが強くなるキッカケとなりました。しかし、不安なスタートをきった学校生活でしたが、半年がたつ頃には下級生のクラスをまわって日本に関するプレゼンをし、週末には先生のお宅に遊びに行けるような自分の居場所へと変化しました。また、現地の支部活動ではイタリアやセルビアなど世界各地から来た留学生との交流があり、留学仲間として心強い絆を育みました。

現地の支部メンバー

現地のホストファミリーは素敵な家族で、ホストファザーは「この家を自分の家だと思いなさい」という言葉が口癖でした。1歳差のホストブラザーとはアニメやゲームを楽しむ本当の兄弟のような関係になり、ホストマザーとは家事を分担し、一家の一員として生活を送りました。彼らが提供してくれた居場所が、留学生活をより充実させてくれたことは間違いありません。帰国して2年がたとうとする今でもホストブラザーとは近況報告をかねてオンラインゲームをする仲です。

先生のお家近くの大きなブランコ

ポルトガルで培った経験は帰国後に様々な挑戦をする後押しとなっています。6月末に日本に戻った私は、その夏にAFS日本協会理事長である加藤暁子氏が専務理事を兼任されている日本の次世代リーダー養成塾に参加しました。養成塾では、マハティール氏を筆頭に世界の第一線で活躍する講師の方々から講義を受け、同じ塾生と戦争はなくせるかというテーマのもと2週間にわたるディスカッションを行いました。また、今年の夏にはNPO団体の一員としてモンゴルでのボランティア活動も行いました。そうして帰国から1年がたち、高校3年生に進級した私は大学進学というターニングポイントを迎えます。慣れ親しんだ環境から一歩踏みだすことには不安を感じますが、自分の経験を自信に変えてイギリスの大学に今年の9月から進学する選択をしました。東京の公立中学校に通っていた15歳の自分には想像できない道を歩いていますが、好奇心を大切にこれからもたくさんのことに挑戦していきます。

リーダー塾

最後に、本当に貴重な体験を提供してくれたAFS関係者の皆様、そして奨学金による支援をいただいた三菱商事様に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。留学で得た経験を活かして国際社会で活躍できる人材を目指します。

三菱商事高校生海外留学奨学金奨学生
2021年・68期 ポルトガル派遣 / S.Mさん

三菱商事高校生海外留学奨学金

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