The君がこの家を去る前日―3月12日の晩、家族そろっての最後の夕食。「りゅうじさんは、本当に兄弟みたいでした…」家族に向けてテ君がいった。わたしは耐えられず、ずっとこらえていた涙があふれた。これを書きながら、今でも目がにじんでくる。
本当にこの4か月は夢のようだった。テ君が帰ったいま、この4か月の出来事を思い出すと、あまりにも早く、本当だったのか、夢だったのか。

10月31日、宇部空港でテ君と出会った。この日、ホストファミリーをするのは初めてのことで、緊張と期待がまざった複雑な気持ちで家を出た。初めて会ったとき準備していた英語もわすれ、何を言っていいのか全然わからなかったが、テ君は必死に話しかけようとしてくれた。この日のことを考えると、空港から家に着くまでの車の中の1時間30分、スマホの翻訳機能で調べながら、テ君は慣れない日本語で、わたしは慣れない英語で、お互いについて聞きあっていたのを思い出す。たわいもない「What is your favorite song?」、「Which is your dominant hand? (利き手)」などの質問だったが、この時間でうちとけ、わたしたちはずっと仲良くなれた。そこから、私たちの夢のような生活は始まった。

4か月は本当にあっという間だった。毎日が発見だった。わたしたちはいつもリビングで一緒にいたが、時の流れが速すぎて「oh…time flies~」が口癖だった(笑)。留学生を受け入れることは、もちろん楽しいこともあるが、文化や考え方などの面でかみ合わないなど、大変なこともあるだろうと心配する部分も少しあったが、それは杞憂に終わった。4か月間本当に仲が良かった。度々、「こんなに楽しくていいのかな?」、という疑問をもったほどだ。

わたしは16歳、テ君は18歳で少し違ったが、これは単なる数字で、意味を持たないように思えた。日本語や学校、住んでいる町のこと、日本のことを教えたり、ピアノを教えたり、どこかへ連れて行ったりするなど、時には弟のように… 英語やベトナム語、ベトナムのこと、海外への留学のことなど、たくさんのことを親切にわかりやすく教えてくれたりして、時にはお兄さんのように… また時には、心の底から笑いあい本当の親友のようにも思えた。
テ君の優しく温かい人柄には本当に感謝している。

学校でももちろん明るく、たくさんの部活動に参加し、みんなから好かれていた。わたしはクラスが違ったが、「テ君がクラスに入ってから、クラスの雰囲気が明るくなった」という声もきき、本当にうれしかった。特に最後のみんなの前でのプレゼンテーション、お別れの言葉は、涙ぐみながらも、堂々とした日本語で、日本に来たばかりのテ君を知っていたわたしには、本当に大きな成長が感じられ、感動がこみ上げた。

また、テ君はわたしにたくさんの成長をもたらし、実感させてくれた。去る前も、去った後も。テ君のおかげで、わたしは自信をもつことができたし、将来のことをもっと深く広く考えることができるようになれたと思う。また、最後の日、お別れの空港に向かう車の中は、初めてあった日の翻訳でチェックしながらのぎこちない言葉と違い、一度も翻訳を使わず、自然に話ができて、私たちの成長が感じられた場であった。最近でいえば、テ君との日々のおかげで、学校のALTと英語で1時間以上会話して、自分でもびっくりした。

最後の日が近づくにつれて、「もう家族として過ごせる時間は終わってしまうんだな~」と寂しい思いが募った。最後のお別れのときは、泣くのではなく、笑ってお別れしようと2人で話していたが、やはりふたりとも最後は我慢できずに泣いてしまった。今思うと、幸せだったあかしだな、と思う。もっとたくさんの場所に連れて行ってあげたかった、もっと話したかった、など一緒にやりたいことはまだまだあったが、本当に幸せな4か月だったなと思う。いま、もうこの4か月がなかった自分の人生は考えられないし、想像することもこわいように思う。ホストファミリーとして過ごしたこの4か月を通して、AFSのプログラムは、ホストファミリーが思いやりで引き受けるからこそ、本当の家族のように思うことができる、素敵なプログラムだと思った。

Thank you so much for giving me really good memories. I’ll cherish them forever The君
そしてこの留学を実現させてくださったAFSの方々、学校、県、国、世界など、見えないところで支えてくださった方々は数えられませんが、かけがえのない時間、経験をつくってくださり、本当にありがとうございました。


ホストマザーコメント

ホストファミリーで母親役をしていました。
日本語がある程度できる子だったし、行動はいつも息子と一緒だったので、私は随分楽をさせてもらいました。
食事や玄関先ではいつも、丁寧な挨拶をしてくれました。
息子と一緒に出掛けては、買い物したり、運動したりしていました。
家では、二人の日本語と英語での会話が始終聞こえてきました。
別れる前5日間位は 二人であちこち行って思い出作りをしているかのようでした。
別れは、本当に辛そうで二人とも涙していました。
別れたあとの息子は、しばらく何も手がつかない様子で、かけがえのない時間を過ごしたのだなと改めて感じました。
留学生受け入れを通して、息子は、広い世界の扉を開けたと同時に、(不思議な体験が入った)宝物を見つけた気分だと思います。
貴重な経験をありがとうございました。


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