さまざまな形でAFSと関わる5人のパネリストにAFS体験をお話しいただき、今後のAFSについて意見を交わしました。
パネリストのご経歴については、AFS Japan 70th Anniversary 記念式典・祝賀会ページをご覧ください。
● AFSの今後、変わりつつあるAFS
中山:派遣生の保護者でもある前川氏にお尋ねする。ご自身の留学体験と、送り出す側から感じるAFS体験について、ご意見を伺いたい。
前川氏:世界的にボランティアで留学生を受け入れる学校や家庭が減っていると聞いたが、AFSが展開する、家庭に入って地元の学校に通って現地の生活をする、ボランティアで受け入れてくださるという基本形の重要性や価値は変わっておらず、むしろますます重要になっているのではないかと思う。日本の次世代が個人の能力を鍛えていく上でも、世界の様々な問題を解決するためにも、国境を越えた協力は欠かせない。
いくつか提案がある。1つは、まずAFS関係者がもっとAFSのことを宣伝しなければいけないということ。私も務めていきたい。AFS関係者の交流もとても貴重だ。これをより充実させていけるとよいと思う。
2つ目は、例えば中東やアフリカの国々からの受け入れや派遣など、参加国がさらに広がっていくこと。
3つ目は、前段(「AFS体験」とは何であったか?)で大人の理解が大事だという意見があったが、大人のホームステイがあるとよいと思う。家庭という「社会の核」に入ってその国を理解するという機会を提供することが生涯を通してあってもよいのではと思っている。
(一同拍手)
中山:ホストファミリーを探すことの難しさへの言及があった。AFSが実施するのは善意に基づいたプログラムであるが、長澤氏に現状をお聞きしたい。
長澤氏:ホストファミリー探しについては、コロナ禍の影響もあり、各国とも難しい現状ではある。各国、各支部、本当に一生懸命やっている。いいアイディアがあれば歓迎する。お近くの方に広めていただくなど、皆さんのご協力がいただけると本当にありがたい。
私はホストファミリーを始めるときに、ボランティアの先輩に「お腹を傷めずに各国に子どもができるよ」と言われた。「それは便利だな」と思ってホストファミリーをやったのだが(一同笑い)生徒を受け入れるメリットも、もっと主張していかなければいけない。
以前、派遣生宅を訪問した際、ホストファミリーになることを勧めたら「でも大変なんですよね」と言われ。「え、今からその大変なことさせに行くんですよ」と。(一同笑い)今まで考えてみたこともなかったので率直な思いだったとは思うが、受け入れることで世界のいろんなことを分かるようになる、幅広い視野を持てるようになることなどを、うまくを伝えていきたい。
私自身は、ホストファミリーの基本は、愛情だと思っている。愛すべき子どもが各国に増えるのはすごいこと。
ニーズは多様化している。コロナ禍を経て、オンライン化も非常に進んだ。毎日のように親と連絡を取る留学生がとても多い。派遣生にも多い。それによって母国からのアドバイスによってかえって問題がこじれることも起こっている。
しかし、やはり一番大事なのは、人とのコミュニケーションだ。テキストメッセージではなく、実際に顔を見て話す『対面のコミュニケーション』をいかにたくさん取るか。対面のコミュニケーションの重要性は、ホストファミリーやLPとも、常々、話している。
日本語学習が進んでいないために遅れをとってしまう留学生もいる。今後は日本語学習についても、もう少しサポートをしたい。
中山:学校から見て、AFSへの提言はあるか。
松本氏:教育が世界に対してどれだけ開いていけるか。教育組織に関わる人たちが、みんな考えていかなければいけないと思う。
教員免許を取る際、現状では、国際経験は特にプラスに査定されない。教育の中で国際化ということは、もう少し語られてもいいと思う。
先ほど話のあった『大人の海外研修』について。私の学校では、海外の学校と交流する際、生徒を引率する教員が、生徒が帰った後も1ヶ月間残り、現地のスタッフとして働く企画を調整している。(一同どよめきと拍手)例えば、そのような機会に、AFSから『異文化理解パッケージ』的なものが提供されれば、助かる学校もあるのではないかと思う。
学校には、公民館的な役割もある。学校をコアにして、地域研修会や交流会などを企画すれば、ホストファミリーなど受入に潜在的に興味のある方にアプローチできるのではないか。
また、先ほど言及があった日本語の学習は、とても大事だと思う。日本語ができない段階から、本人のキャラクターで、どんどん中に入っていける生徒は一定数いる。一方で、そうでない生徒もまた一定数いる。日本語でのコミュニケーション能力は、友達と長続きしたり輪が広がったりする可能性に差が出てくると思うので、日本語能力についても、何か基準になるようなものがあればよいと考える。
最後になるが、ホストスクールとして受け入れることで、想像をしなかった展開があることを伝えたい。
例えば、見せたいものと相手が見たがっているものは、たいてい違う。よかれと思って見せたが全然喜んでくれない一方で、なぜそんなものを見たがるの?という点に強く関心をもたれることが多々ある。(一同うなづき)これは、自らを客観的に見る素材にもなる。外国の人が価値を見出す理由を考えるのは、教育の素材としても大きな意味を持つと思う。お互いに学び合えるものもあると思う。
(一同拍手)
中山:さまざまな提案に感謝する。ぜひ取り入れて新しいAFSにつなげていきたい。最後は、若い2人に一言ずつコメントをいただきたい。2人は日本との関わりを継続しているが、今後、AFSとどのように関わりたいか。
ジョルダーニ氏:現在、卒論を書いているところだが、夏は、日本のAFSでインターンをした。イタリアに帰ったら、AFSでのボランティアをしたい。今の私があるのは、すべてAFSのおかげだ。永遠に感謝する。どこにいても、できる限りの活動を、AFSのボランティアとしてがんばりたい。
トン氏:私も、今までサポートをしてもらう側だった。これからは、AFSの家族として、活動に関わっていきたい。ホストファミリーのもとには、毎年、帰っている。家族だ。お母さんは、支部で活動するボランティアでもある。お母さんのつながりで、困っている留学生を助けたり、AFSの家族として活動していきたい。
(一同、盛大な拍手にて終了)
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