ポテトによる口傷と、身体が覚えた別れのハグ感覚が、ふとベルギーをフラッシュバックさせる。

絵やデザインを見てみたい。多文化の中で多くの違いを見たい。そんな気持ちで飛び込んだベルギー王国は、全てが新しくて未知で好奇心が止まらなかった。部屋のドアや窓からの景色にまで心を踊らせ、国民食のポテトを私はホストファミリーと一緒に貪り食べた。

ホストとの一枚。私の誕生日を日本食で祝ってくれた。

日本に比べ比較的自由である学校は、楽しさと息苦しさが混在する場所だった。遅刻が成績に関わることもなければ、先輩の上下関係もない。皆違って当たり前という考えが根付いてるから、お互い尊重はするが他人は他人である。先生がいない日は自習もなくみんな一時家に帰るのだが、その各自性が理解出来なかった私は気づいたら学校で一人勉強していた。

興味があった美術のクラスに入学できた私は、上手くフランス語を今喋れなくてもアートを通してコミュニケーションを取れると思い、最初から居場所がある気がした。

しかし、それは自己満足だった。

どれだけ真面目にやろうが、勉強しようが、自己発信をしない限り、注目されることはあっても誰かと話せることはない。フランス語できちんと話せないからみんなの共通話題も分からない。おかげでしばらくは一人でいることが多かった。

そのうちみんな何に興味を持っているのか、どうやって馴染もうか何をするべきか堅苦しく考えるようになった。同時に大事なことは気持ちに素直でいることだなと思った。

5ヶ月以上、まともに喋らなかったクラスメートも、お勧めの日本漫画を5分喋っただけで気づいたら仲の良い友達になった。みんなを見て動くより、興味の方向に動くのが一番だと思わされた。

友達と行ったアジア文化イベント。アニメの力すごいなと思った。

自分にとっての一番の異文化体験は、多分両親のいる家庭だったと思う。Bizzと呼ばれる互いのチークを合わせることをはじめ、毎回家族間で愛を伝える習慣は私にとってとても新鮮だった。

ホストファザーの「家族はチームワーク」という言葉は、今生忘れられない。ホストファザーの帰りが早ければ調理は彼の仕事。子供達はテーブルを準備。ホストマザーが帰ってくる頃には全て整いそのまま食事をして、今日の出来事を共有。イクメンって何ぞやとよく思わされた。いつも言い争いつつ、助け合いつつ、愛し合う。

とても素敵だと思いつつも、ホストとの間で沈黙がある時は、自分がチームに参加できているかとても不安になった。その分、一緒に空手を練習する時間はかけがえのないものだった。

最後の日に集まった空手のメンバー。帰る実感が湧かなかった。

余談だが、空手用語は基本、世界共通で日本語である。そのため、フランス語で教えるより日本語の方が通じるという変なシチュエーションが度々あった。

宿題で出されるスケッチの課題は、熱中しつつも辛いものだった。部屋で1人、課題は各自のスペースで処理するべきというホストの意向と、みんなともっと関わりたいという気持ち、そして課題をやらねば授業参加することすらできないという不安がよく葛藤していた。

時間を忘れてスケッチして夕食をすっぽかし、最悪な雰囲気になった時は自分の居場所が分からなくなった。けれどその居場所云々と考えるのは、時間の無駄だったのかもしれない。

自分がどこに属してるなんて考えず、「人を大事にした分だけ」「その人も支えてくれる」。気づいたら自分の居場所があるのだと思わされた。

現地での発見。ベルギー人は自虐ネタが好きなのだと思う。ホストシスターの口癖は、「ベルギーはアホ」だった。クラスメートがふざけている中、自分だけ理解できずに困惑していると、必ず助け舟を出してくれる友達がいた。大抵の内容は、「私達、馬鹿」で、何故かそれを日本語で言っていた。

笑ってしまった出来事。よく行くポテト屋さんで相席したにーさんから「何でこんなつまらない場所に来たんだ」と度々言われたこと。

ヨーロッパの中心にいるからこそ国際性が学べるなどと思ってた自分は、国際性って何ぞやと考えるようになってしまった。それは自分にとって良い気づきだった。

何故なら私は、自分の住む島が田舎の閉鎖された空間で、海の向こうは刺激とストイックが入り混じった未知の世界と考えていた。それは、幻想と教えられた気がしたから。

どんな所にも刺激と退屈は混在していて、どっちを感じるかは、自分のアンテナ次第だと教えられた。何より、私の住む石垣島も世界の一部。自分がどこにいるから、海外に触れたから、なんて考えがちっぽけに思えた。

「外」を見た結果、「内」にもっと目を向けようとしてることになんか笑ってしまう。留学で得た最高の価値。私の原点、石垣島を誇らしく思う。
ボランティア奨学金支援者の皆さまありがとうございました。

ベルギー(フランス語圏)派遣
AFS65期/ボランティア奨学生 小川 秀雄

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